老い支度のこと

先日、30代で亡くなった旧友のご亭主から、電話がかかってきました。80歳を超えて、都営住宅の一人暮らし。脊柱管狭窄症の手術を受けてから足元がおぼつかなくなり、今住んでいるのはエレベーターのない3階なので、用心しいしい暮らしている、という。子供3人は立派に育ち、それぞれ家庭を持っているのですが、同居する話にはならないようです。老人ホームへ入っては、と勧められるが、昨今の高齢者虐待や所持金詐取の話を聞くと、気が進まないとのこと。尤もです。殊にコロナ下の今は、一旦入居すると、閉じ込められたも同然になってしまう。

私も、在宅でと考えるようになりましたよ、と言って電話を切った後で、食事の美味しい老人ホームを探して一緒に入りましょう、とかつて冗談半分に話した事を思い出しました。むしろ私のことを心配してくれたのかも、と気がつきました。

逆説的なようですが、今どきの老人ホームは、身寄りがちょくちょく訪問できる人向きなのです。親や祖父母を送り込んでそのまま、安心してしまっていいわけではありません。父親を預けた従妹は、なまじ介護保険ができたために、介護サービスの手続きに必要だからと、度々判子を持参するように言われ、音を上げていました。

虐待や盗難がなくとも、融通の利かなくなった年齢で入る集団生活には、思いも寄らない障壁があります。ある程度主体性を保てる内から、知識を蓄え、自分の選択を決め、いま出来る用意をしておくことが必要です。漠然と思い描いている老後、高齢者対策、資金繰りなどは、意外に今どきの現実から外れている可能性が高い。父、叔父、従姉、また福岡の親族や古い友人の場合などを見てきて、考えることが多々ありました。少しずつ、そういう話題も書いておこうかしら。フォロワーが減るだろうなあ。