三河の中世

愛知教育大の松島周一さんから手紙と共に抜刷2本が送られてきました。①「高橋庄地頭中条秀長の登場と中条時長」(「豊田市史研究」13号  2022/3)、②「三河の中世―足利氏とともに歩んだ歴史―」(岡崎市美術博物館開館25周年記念『至宝 燦めく岡崎の文化財』 2021/10)。

①は開創期の室町幕府を支えた中条家の系図について、14世紀半ば、中条秀長と時長の関係、中条家の当主は誰だったか、奥州への拡大志向などを考証したもの。②は徳川氏登場の舞台としての印象が強い三河地方は、中世、鎌倉と京都の間にある要衝の地として室町幕府の干渉を受け続け、足利氏やその後裔一色氏が倒れた後は国内に強大な勢力が育たず、戦国時代に入るとするものですが、単著『鎌倉時代の足利氏と三河』(2016/5 同成社)の続編のようになっています。

手紙には、来春定年を迎えると書かれていました。私が名古屋勤務だった頃、松島さんは着任早々の元気一杯若手教官で、松薗斉さんや今井正之助さんから可愛がられ、紅顔の少年のような、微笑ましい挿話が数多、公然非公然こもごも語られていました(自宅の室内装備は裸電球だけだったとか、初デートで4Km歩き続けたとか・・・)。

着任以来32年経ったのだそうですが、この間、人によっては逃げまくる郷土史の仕事を幾つも引き受け、定年後も東海地方の中世史研究を続ける意気込みを手紙に綴っています。名古屋は街路樹の紅葉が美しい街、愛教大のある刈谷は白壁と瓦屋根の家並が落ち着いた街。今日あたりは快晴でしょうね。私も一度は、老後をここで送るかもと考えた土地です。往時茫々、人それぞれ。いい老後を迎えられそうですね、と返信に書こうとしましたが、彼には未だ早すぎるか。