源平の人々に出会う旅 第68回「米原市醒井・日本武尊」

 『古事記』や『日本書紀』には、景行天皇の御代に日本武尊が東国征討へ向かう際、伊勢神宮に寄り、草薙剣(後の三種神器の一つ)を授けられたという逸話があります。

【居醒の清水】
 日本武尊伊吹山滋賀県岐阜県の県境)征伐に向かいますが、山神に返り討ちにあい、山を下りて泉を飲んで気持ちが醒めたことから、居醒泉(いさめがい)と呼ばれるようになったと記されます。『源平盛衰記』は、壇ノ浦に沈んだ宝剣の伝説として類似の逸話を載せていますが、「異賊の呪咀」によって「燃焦」に苦しんだ尊が、弓の弭で地を掘ると水が湧き出し、その湧水で体を冷やしたという内容になっています。歴史上の人物が杖や弓などで泉を湧き出させる伝説は全国にあります。

 

【泡子塚(仲算結縁水)】
 西行が立ち寄った茶店の娘が、西行の飲み残しの茶の泡を飲んで懐妊し、後日、それを知った西行が「我が子ならば元の泡に帰れ」と祈ると、たちまち児は泡になったとされ、この地域を児醒井(こさめがい)というようです。また、興福寺の高僧仲算が短剣で岩石を切ると、清水が湧き出したともいわれます。仲算については『源平盛衰記』に、竹生島の琵琶にまつわる逸話が記されています。

 

【梅花藻】
 醒ヶ井宿を流れる地蔵川は、梅花藻(バイカモ)の名所として知られています。清流に咲く白い小さな花が、梅の花に似ています。


〈交通〉
JR東海道線醒ケ井駅
    (伊藤悦子)