棺の蓋は

ゴルバチョフが亡くなりました。西側諸国では「話のわかる」政治家として人気がありましたが、本国ではそうではなかったとのこと。むしろソ連崩壊を招き、その後のロシアを混乱・困窮に追い込んだ人物として批判され、現在のプーチン政策の淵源になったと言われているそうで、かつてポーランドワレサも、同様に西側諸国と本国とでは評価が全く異なると聞きました。たしかに、自由主義こそが最高の選択だと考えない立場からは、事態をより悪くした政治家だと見られても仕方がないかも知れません。

いわゆる「外面(そとづら)がよい」リーダーは、一時的には人気があっても、そのツケを払わされ、その後を背負わされる側からは、棺の蓋を覆うて後、ほんとうの評価が見えてくるものです。

閣議決定憲法解釈を変え、閉会中審査で重要討議を済ませ、補正予算を連発、赤字財政にも拘わらず膨大な予備費は使い切れずに繰り越し、概算要求には事項要求列挙・・・日本の政治は今、議会制民主主義が機能していると言えるのでしょうか。海外から哀惜の声が高い、というのはつまり、そとづらがよかったからでは。永くその座にあったことが即業績とは言えません。弔問外交、というが、ロシアも北朝鮮も(習近平も)来ないのに、正規の外交ルート以外で話し合う何があるのでしょうか。

弊国では、彼の棺の蓋は未だ覆われてはいないのです。条件付きの国民の弔意なら、内閣葬でいい。何よりも、選挙に借りるべきでない人手を借りて多数を誇り、血税を使うべきでないところへ支出していた「業績」が、その儀式に相応しいのかどうか。家族葬を儀仗兵が見送ったことで十分でしょう。たとえ閉会中審査でも、現総理は彼の「功績」を一つ一つ具体的に挙げて説明すべきです。記録に残って、歴史の批判に耐えられるように。