阿波国便り・桑の実篇

徳島の原水さんから、「暑くなり、そろそろ日中の散歩がきつくなってきました。快適な季節はあまりにも短く、人生また然りです」と写メールが送られてきました。

赤い桑の実

【郷里の隣は龍野という田舎町で、三木露風の生地です。そのため「赤とんぼ」に出てくる「桑の実」が、子供の頃から気になっておりました。家にも桑の木はありましたが、実は成らなかったように思います。徳島に来て、初めて見ました。熟した実を潰すと指が真っ赤に染まり、食べたいとは思いませんでした(原水民樹)】。

童謡「赤とんぼ」は、かつては「古里」や「夕焼小焼」などと並んで、日本人が共有する幼年時代の回想でした。私は湘南育ちで、茱萸の実は知っていましたが桑の実は見たことがなく、福岡の農村出身の祖母から聞いて憧れていたこと、以前このブログにも書きました。但し農村では実は子供らの食べ放題、手籠に摘む暇はなかったようです。

食べ頃の桑の実

そうそう、このくらいが食べ頃で、赤いうちは綺麗ですが美味しくない。祖母も口の周りが真っ黒になるほど食べた、と言っていました。長野には黒紫色の桑の実のジャムがあって、細かな種子の歯触りとほどよい甘さが絶品です。

クサフジ

原水さんからのキャプションにはカラスノエンドウとありましたが、同じ豆科のソラマメ属ですがクサフジです。野草とは思えない艶やかさですね。

カラスノエンドウは、花は小型のスイトピーのようで、ピンクの濃淡が鮮やかです。豌豆によく似ているが小型の野生種、という意味の命名でしょう。さらに小さい、スズメノエンドウという草もあります。鳥取にいる時、莢を集めて炒めてみましたが、硬くて歯が立たない。調べてみると、若い莢は食用になるとあり、草そのものはお浸しや天麩羅で食べられるそうです。春先、1,2本摘んで小さな器に活けると美しい。