メモリアル・フラワー

父の命日が近いので、例年通り、花屋にフリージアを注文しました。白と紫、一重を20本ずつ。彼が好きな花だったのです。20年前、葬儀の打ち合わせで、最後に葬儀屋が、何か特別な御注文がありますかと訊いてくれたので、フリージアを飾って欲しい、と頼んだら、白い胡蝶蘭で埋められた祭壇の裾に、白と紫、そして差し色の紅のフリージアを飾ってくれました。あの当時は季節の花だったのですが、近年は季節の繰り上げがどんどん進み、もはやこの時季には、黄色以外は手に入らなくなってしまいました。

その上、コロナで国内向けの花の生産が減りました(花屋の言では、農水省補助金は施設整備用なので、農家が設備だけ造って生産をしなくなった、という。むやみに高価な珍しい野菜や花を作って、アジアの富裕層向け輸出に励んでる、とのこと)。一昨日の朝6時過ぎ、電話がかかってきて、いま市場で白20本,紫10本、いいのがあるが1本¥250でいいか、と言う。2時近くに寝たのに、6時起きはつらい。目をこすりながら、それで結構です、と言って(去年までは1本¥200だった)切りました。

引き取りに行ったら、なるほど立派な白の一重咲きが20本用意してありましたが、紫はホテルからの注文に仲卸が渡してしまった、と言う。もういい、と言って白だけを買って来ました。ショーケースには黄色の20本も取り置きしてあって、やはりフリージアの好きな人から墓参用の注文だと言う。墓碑にもフリージアを彫刻したのだそうで、たぶん、父と同世代なんだろうと想像しました。

この花屋も3月末で閉店です。来年はもうないからね、と仏壇に言いながら、大きな花瓶に白15本を挿しました。いつもなら半分を持って青山霊園の祖父母の墓参りに行くのですが、今年はもうその根性がない。白5に黄2本を足して寝室に置きました。