コロナの街・part 33

蜜豆好きだった叔母の命日が近いので、遊園地近くの大手スーパーへ出かけました。区役所の中を通り抜けたら、ロビーにワクチン接種会場の案内を掲げた人が2人立っていましたが、時間外なのか閑散としていました。まずユニクロで冬物のインナーを買い、スーパーへ回りました。小さな子連れや2人だけのカップルがぞろぞろ歩き、遊園地も賑わっていました。とうてい蔓防下とは見えません。

目指す買い物が済む頃には、店内はごった返し始めました。未だ4時半だったので、仕事帰りとは思えません。コロナ前の土日よりも遙かに客が多く、夫婦連れか20~30代のカップルが圧倒的に増えています。レジで福岡への配送を頼むと、背後から無言の尖ったまなざしを感じました。私からすればこの用事でわざわざ来たのだし、いつも通り配送が頼めるレジに並んだのですから、意識的に明るく発声して用を済ませました。

表へ出たら、入店制限を始めていて行列ができていました。荷物が重いので、区のコミュニティバスで帰ることにしました。少し時間はかかりますが、10代の頃よく歩いたこの界隈を、早春の黄昏に一回りするのもいいかな、と思ったのです。湯島には入ってみたい小料理屋があちこちにありました。上野松坂屋の建物は65年前と同じシルエットでした。何だか末期の眼で見ているような自分に気づいて、可笑しくなりました。

ところが、バスの運転手が頻りに咳をするのです。エッセンシャルワーカーを確保するとは、こういうことか、と思いました。要・急の外出先で避けられぬ接触が起こる。行政の方針はころころ変わり、いま自分に緊急事態が発生したらどうなるのか、まずどうすればいいのかもよく判らない。不安を抱えながら帰宅し、店頭に並んでいた春色のシャツやよその垣根に咲いていた紅梅を思い浮かべて、就寝することにしました。