玉ゆら

吉崎敬子さんから季刊の歌誌「玉ゆら」68号が送られてきました。吉崎さんとは大学院生時代に非常勤先(もう、どこの学校だったか、あまりに昔のことで思い出せません)で知り合って、爾来ずっとお付き合い頂いています。高校教諭を定年退職して後は、登山と詠歌に打ち込み、また和歌説話を中心とした古典文学を分かりやすく紹介する本も出しています。口語と文語の混じった日常詠を連載していますが、次第に嘱目を言葉の出てくるままに詠む、自由な詠風になってきました。

それゆえ彼女の近況が手に取るように分かる、手紙のように読むことができます。今号には「痛」と題した18首が載っていて、急な膝痛で、杖(ウオーキングポールと言うらしい)を使うようになったことが歌われています。登山とスキーが得意だった彼女のこととて、さぞショックだったろうと同情しました。でもお嬢さんに誘われて、トロンボーンの演奏会に行った感激も歌われており、相変わらず心豊かな生活を楽しんでいる様子が伝わってきました。

杖をつく老人と行き違ふとき頑張りませうと声をかけらる

この音を若きわたしに聞かせたかった溜息まじりにつぶやく人あり

空に覆ひある如き気鬱のわが日々をトロンボーンの響きが満たす

オリオン座ベテルギウスの光度減る 宇宙はこの間も変化し続く(吉崎敬子)

同人には高齢の女性が多いのでしょうか、老いや死者との別れがしみじみと歌われています。その中の口語詠1首ー山の端に横たふ雲よ弟よ9年たつたね話がしたい(小山加悦子)