海の見える杜美術館が3月2日から5月12日まで開催した特別展「幸若舞曲と絵画―武将が愛した英雄たち」の図録を読みました。この図録には海の見える杜美術館の谷川ゆきさんと、国文学研究資料館の小林健二・恋田知子・粂汐里さんとが解説を書いています。小林さんは幸若舞曲について、恋田さんは「大職冠」について、谷川さんは新蔵の狩野春雪筆「夜討曽我絵巻」9巻本について書いており、読み応えがあります。
美しい絵画資料の画像もふんだんに盛り込まれ、第1部は舞の本、第2部は義経関係、第3部は源平合戦、第4部は曾我兄弟関係の絵巻・絵本・屏風など、幸若舞だけでなく軍記物語を題材にしたものもとりあげています。改めて海の見える杜美術館の収蔵品のすごさに唸りますが、他の所蔵者から借りてきて展示したものもあるようです。渡辺美術館の屏風は最近有名になってきていますが、私が鳥取にいた頃は未だ建物も十分でなく、ただごちゃごちゃとがらくたが投げ込まれているようにしか見えず、一度入ってすぐ出て来てしまいました(その後立派な館ができた)。
こうして題材別でなく並べて見ていると、相互に場面構成や色使いが共通しているものが多いことに気づきます。奈良絵本やその周辺は、正統的な美術史では殆ど顧みられないままのようですが、今後は文学研究との交流も盛んになって欲しいものです。
平家物語扇面絵は、つい最近も市場に出ました。扇形という空間を活かして物語の場面を構成しているものもあれば、単に横長型に描いたというだけのものもあり、けっこう幾つも制作されていたのだなと思いました。
それにしても会期中に展示を観に行かなかったのは、痛恨の極みです。広島はあまりに遠い・・・けど。