信濃便り・遅い春篇

長野の友人から、クロッカスの花を見つけた、とメールが来ました。

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クロッカス

【長野にも急ぎ足で春が来ました。水仙沈丁花、(名前が季節に合わないけど)クリスマスローズ、梅、と次々に咲き始め、枝垂桜の蕾も真っ赤になりました。道端で、クロッカスらしき花を見つけました。】

雪国の春は、早春の花から晩春の花までの日にちがあっという間。東京ではすでにクロッカスは終わりましたが、長野では菫がようやく芽を出したくらいのようですね。志村ふくみの文章で読んだのだったか、立春頃の桜の枝を煮ると、桜色の染料が採れるのだそうで、歩みは遅くとも、生物の内部には春爛漫が用意されているものらしい。

3月21日は国際ダウン症の日だったそうで、21トリソミーに因んだ設定なのでしょうか。偶然ですが、21日に明翔会で中尾文香さんが、障がい者にもそれぞれに応じた生き甲斐と居場所を、という講演をしました。長野の友人は、可愛がっているミナト君のこともあって、この問題に関心を持って聴いたようです。

NHK-ETVでは宮本亜門ダウン症児を含めた舞台を演出するドキュメントを放映し、朝日新聞には、作家岸田奈美がダウン症の弟のことを2日連載で書きました。連載の最後、「弟はたまたま障害を持っていない人が多い世界にいて、ゆっくりと追いつこうとしている。でも、彼が持って生まれた目的は、我々に追いつくためではないと思います。」という一文は胸に刺さりました。そして、作家だからこの言葉にできた、言葉や文学で、世界とたたかえる、誰かのために代弁することもできる、と思ったことでした。