就任式

米国新大統領の就任式が終わりました。地元からワシントンへ向かって発つ前の演説で涙ぐむ場面もあり、弊国で言えば肌には白装束という気持ちだろうか、と勝手に想像してしまいました。アメリカ文学専門の友人は、リアルタイムで中継を視たそうです。「Bidenの就任スピーチは、易しい言葉、短い文章を選んでいて、英語のnative speakerではない人、全世界の人にも呼びかけている」というメールが来ました。

レディ・ガガ(彼女にしてはおとなしめの衣装だった)の国歌のほか、詩の朗読や歌唱があり、幅広い文化への敬意を感じました。就任演説はなるほど易しい言葉で、しかし詩と哲学のあるものでした。弊国の政治家がこんなことを言ったら、歯が浮いてしまいますが、いまこの危機に際して、国民を惹きつけるだけの力を持っている。何故だろう、彼我の違いはどこにあるのか、と考え込まざるを得ません。

新聞報道によれば、米国のCOVID19による死者は40万人を越え、第2次世界大戦の死者を上回るという。前夜に追悼式を、演説の中でも黙祷を行ったのは、普通人の神経を持った政治家であることの証しだと思いました。

2019年時点で、世界の民主体制の国・地域は87、権威主義体制は92、という数字があるそうで、民主主義はこれから先も維持できるのか、自明のことではないようです。朝日新聞朝刊の「経済気象台」欄には、冷静に見れば、米国の権力分立と民主主義の底力を感じる、米国の行政府内には、従うべきは大統領個人ではなく憲法と国民だというプロ意識を持った人々が沢山いた、我々は自分たちの民主主義を心配した方がいい、と書かれていました(署名は「義」)。同感です。僕らが契約する相手は国民だ、と言い残して死を選んだ公務員のことは、未だ記憶に新しい。