会場校

鳥取へ行ってすぐ、中世文学会の会場校を打診されました。助教授だったので、直属の教授が一切学会とは関わりを持たない主義で、受けられませんでした。名古屋で勤めた時にも打診され、私の所属は文学部ではなく、所在地も辺鄙だったため、文学部の安田孝子さんに話して、オール名古屋で、という約束で引き受けることになりました。後で聞いた話では、安田さんはご主人との間で、私費持ち出し上限額○○万円までという相談もしたそうです。まず大学の学会開催補助金を申請し、それから私を連れて県と市の補助金申請に出かけました。どの補助金も金額は僅かなのですが、私学は県や市に、こういう社会貢献もしているということを見せておかなくてはいけないのだ、と教えられました。

未だ大学院がなく、院生はいません。名古屋軍記物語研究会にも同朋大学にも手伝って貰い、遠い実地見学の下見に出かけました。昼食に出す弁当の試食もしました。会計や受付には愛知県立大学に応援を頼み、文学部の他分野の教員にも助っ人をお願いするなど、オール名古屋を実現していく過程を見せて貰いました。

小人数教育が売りの大学でしたから、大教室は作られていません。ケーブル放送会社と契約して、いくつかの教室でも中継を視られるようにしました。いま思えばオンライン学会のはしりです。当日安田さんは、トイレットペーパーの点検までされました。学会は会場を依頼しただけで委員に任命することもせず、私はいささか憤慨しました。

ケーブル中継は好評でした。くつろいで聞ける部屋があるのもいい、と。学会終了後の始末も各方面への御礼回りも綺麗に済ませ、手伝って成功させた、という満足感をみんなに残した手際に、私は心底感服しました。同時に、今後は会場校の負担を減らすことを考えなくては、とも思いました。30年前の話です。