無花果

今夏は青果が高い。野菜も果物も手を出す前に考えてしまいます。無花果も結構な値段ですが、名古屋では安くてよく買いました。三河安城が産地だそうで、それまでは無花果なんて裏庭で生っているもので、店で買う物ではない、と思っていたのですが。東京ではなじみがないのでしょうか、短大の学生を連れて能登半島へゼミ旅行に出かけ、輪島の朝市で買おうとしたら、誰も食べ方を知りませんでした。2つに割って、皮を裏返すようにして中身を食べるんだよ、と教えました。

無花果は料理にもよく使われます。今までで一番美味しいと思ったのは、萩へ行った時に、地元出身の人が連れて行ってくれた日本料理屋で出た料理です。半分に割って、甘い胡麻だれがかけてあり、薄甘い果実の味とよく合っていました。山陰には、思いがけず日本料理の名店があるのです。日本庭園や茶道の文化と関係があるらしい。

その思い出が忘れられず、後輩たちと入った学生用の居酒屋で、メニューに「無花果と生ハム」とあるのを注文して貰いましたーそのまんまでした。縦8つ割にした無花果に生ハムが載っているだけ。でも、これにちょっとソースを工夫したら、日本酒にもワインにも合う1皿ができるのでは、と思ったのですが、未だ試していません。

無花果は聖書にもよく出てきます。従姉の亭主だった医師は、癌などの特効薬になる成分が含まれていて、それが新約聖書の奇跡譚になったのではないか、今そういう研究が進んでいる、と言っていたことがありますが、その後どうなったのでしょうか。

子供の頃の湘南の家の裏庭には無花果の木があり、父は、知り合いの芸者さんに帯の下絵を頼まれたとかで、黒地に無花果を描いていました。帯なら大胆な図柄になったはず。今、私は、それをデザインした専用の便箋を使っています。