コロナ後を生きる

村上陽一郎編『コロナ後の世界を生きる―私たちの提言』(岩波新書)を、友人から借りて読みました。24人もの様々な分野の(岩波文化圏の)人たちが、書名通りのテーマで書いた短文を集めた1冊。本書は7月17日に発売されていますが、本来こういう内容は、ブログなどのメディアで発表される方が相応しいのでは、と思いました。事態が時々刻々変化しているからです。

本書はⅠ危機の時代を見据える Ⅱパンデミックに向き合う Ⅲコロナ禍と日本社会 Ⅳコロナ禍のその先へ という構成になっており、Ⅰは総論として有益、Ⅱは各国での生活体験の報告として面白いのですが、Ⅲの中、社会政策学者阿部彩「緊急事態と平時で異なる対応するのはやめよ」が、現場に根ざした発言として説得力があります。

友人は、医療社会史が専門の飯島涉「ロックダウンの下での「小さな歴史」」に付箋をつけていました。スマホやAIなどの技術が広く社会生活に食い込んでいる現代にあって、中国、韓国、シンガポールなど利便性と引き換えに個人情報が国家に管理されている社会では、個人はどう対応するかという知恵が蓄積されつつある、という部分です。

私が興味を惹かれたのは、地域エコノミスト藻谷浩介「新型ウィルスで変わらないもの・変わるもの」、経済評論家内橋克人「コロナ後の新たな社会像を求めて」でした。前者は、視点を変えて見れば、いま求められている「機能する政府」はむしろ日本の伝統に反しており、「中央政府の威信のさらなる低下と、自治体首長への期待の上昇」が自然なのではないか、と言う。後者は、いま欧州では、①気候危機への対応②脱炭素社会の実現③地域循環型経済の創造④金融・社会政策の正当性追求 を包摂した動きが進んでいると言う。そして巻末の、カナダの作家M.アトウッドのアピールは感動的です。