ヨードチンキ

うがい薬でコロナ予防ができるかのような記者会見の後、買い占めとネット転売の話題でひとしきり賑やかでした。当の製薬会社の広報担当者が、そんな効果を予期してはいない、と首をかしげている、という報道もありました。

問題のうがい薬は、ヨウ素を含んでいるので消毒殺菌力が強い、というだけのことだったようです。口腔内の菌のバランスを崩すこともあり、一時的にウィルスを殺してPCR検査の誤診を招き、むしろ困るという結論になりました。製品を並べてみせた知事のパフォーマンスは、どう弁明しても粗忽でした。おまけにマスクと違って、薬品の転売は法律違反です。

かつてヨウ素をアルコールに溶かした消毒薬(ヨーチンと呼ばれた)は、家庭の薬箱にもよく入っていました(今はアルコールではなく、もっと使いやすい溶液になっているらしい)。我が家でも、赤チン(マーキュロ)は、うっかり色素が他の物につくといつまでも消えないので、ヨーチンを常備していた時期がありました。傷口の消毒に使ったり、冬には水に垂らしてうがいしたりしました。でも、深い傷に垂らすと、シューッと白い泡が立つ(沁みる痛さは半端ではなかった)ので、劇しい薬なんだなと認識していました。うがい水も、さほど効果があるように思えなかった(ヨーチンを入れるより、ただの水で頻繁にうがいする方がいい)ので、いつの間にかやめました。

最近は薬品もおしゃれな商品になっていて、やたらに片仮名の記述が多く、成分そのものの知識に照合することが難しくなりました。もともとがヨードチンキだと知れば、コロナ治療の新薬などという誤解は生まれません。分かってみれば、浪速のことゆえ漫才だったの?という話です。