名古屋市立大学日本文化研究会編『アジアの中の日本文化―ことば・説話・芸能―』(風間書房 2019)という本が出ています。名古屋市立大学の昼夜開講制大学院人間文化研究科の日本文化コースを中心として、2008年から開かれてきた研究会の成果を1冊の本にしたもので、同大学の出版助成を受けて刊行された叢書に入っています。メンバーの専門は「日本文化」というキーワードで辛うじて括れる、という程度に幅広く、社会人から学生まで、また国籍もいろいろ、という多彩な顔ぶれです。
副題に示すように、日本語、説話や神話、文化の背景となっている信仰、芸術・芸能と文化交流などの問題が取り上げられていますが、本来、研究会での発表と自由な質疑応答、そこから発展した話題が元になっているので、その場の雰囲気を伝える工夫(質疑応答の一部を載せるとか、コメンテーターにも補足して貰うとか)があってもよかったのではないかと思いました。
明翔会の一員手嶋大侑さんは、「平安時代の人名と当て字」というコラムを書いています。日本の古代・中世においては、しばしば人名に当て字が使用されており、名前に関する感覚は現代人とは違っていたことを、『小右記』『左経記』などを引いて述べています。研究会で発表した時は、国によって、名前を呼ぶ場合の事情が違うことなど、話が弾んだのではないでしょうか。
私が興味を惹かれたのは、阪井芳貴さんの「「しまくとぅば」をめぐる考察のために」という沖縄語に関する報告と、戦前戦後を通じての台湾における日本文化に関する(複数の)報告でした。本書に関するお問い合わせは、風間書房(電話03-3291-5729)まで。