2020説話文学会大会

ウェブ掲示板方式の説話文学会大会に「来聴」してみました。説話文学会のHPに前日から発表原稿(+資料)をアップしておき、当日は発表者ごとにスレッドを設け、書き込まれた質問に発表者が答える、というやり方です。メールを使える人ならば比較的容易に参加することができ、書き言葉なので発表もまとまっていて分かりやすく、抵抗の少ない方法でした。事務局と司会者の労をねぎらいたいと思います。

質問もこういう方式だと効率的な発言になり、よかったと思います。但し発表原稿の分量からすると、全員25分で収まっていたかどうかはやや疑問です。質問に答えるには、口頭よりも大変だったかもしれません。機関誌に掲載する時には、質疑応答も併せて載せて欲しいと思います。私が関心を持ったのは、平本留理さんの「テキストマイニングによる説話集間の関連分析ー三大説話集の解析結果を中心に-」と、金有珍さんの「日本中世のホモソーシャルと男色ー寺院の師弟関係の言説を中心に-」です。

前者は『今昔物語集』『宇治拾遺物語』『古今著聞集』の使用語彙の傾向を分析して、3者の「関連性」を解析しようとする試みで、情報工学の分野で用いられるテキストマイニングという技術を利用したもの。昨夏の軍記・語り物研究会では、戦国軍記を計量テキスト分析によって類型化する試みがありましたが、な~るほどこういう風にコンピュータの能力を応用することが出来るのか、と聞きました。しかしその結果の応用という点では、もっと明確な目的を持って、膝を交えて議論する過程が必要なようです。

後者は、源平盛衰記にも見える「仙童琵琶」の説話などを取り上げ、寺院の師弟関係と男色とは、性愛の問題だけでなく社会的な関係であったと説くもの。男色は、一種のマウンティングや無二の依存性など、もっと心理的な面から検討されていいと思います。