歌の呪力

東大中世文学研究会の第343会例会に出かけました。多田一臣さんの「歌を神に祀ること―歌の呪力について―」と題する講演です。30人弱の参加者で、普段は出て来ない顔ぶれも見られました。多田さんは上代文学が専門のように思われていますが、じつは若い頃は狂言を専攻したかったとのこと、古態を伝えているという天正狂言本によって、狂言「二千石」をまず取り上げ、歌徳説話の淵源に、和歌が持つ言葉の力、歌が対象に働きかける力への畏れがあることを論じました。話題は多岐に亘り、概ね分かりやすく、いろいろな事例が思い合わされて、関心を呼ぶ講演でした。

その後、近くのホテルで立食式の懇親会があり、久々に会った同窓の仲間と立ち話をしました。いつもはそのまま流れ解散なのですが、今回は早めに始まったので、二次会をやる時間が残り、私は若い人たちの後について、落第横町の韓国料理の店に入りました。いつも前を通り過ぎながら入れなかった店です。銀行員や県庁に勤めている、また華道の家元の息子という人もいて、2時間ほど呑んで帰りました。

京極派の和歌研究や、最近亡くなった研究者の逸話、図書館前の噴水塔を造った金具作家の話、いろいろな話題が出ました。さすがキムチは本場の味でした。

帰る道の空には三日月がやや太くなり、白梅の梢には、もう点々と花がほころび始めていました。