私的太平記研究史・後日談

ネット上で、故福田秀一さんの近代日記コレクションの整理が進行中であることを知りました。福田さんは大学院の大先輩。親切だが少々無神経なところもあって、目下の者としてはいささか距離を置きたい先輩でもありました。和歌と自照文学(日記・紀行・随筆)が専門でしたが、あらゆることに詳しくて、軍記物語の分野もよく見ておられました。平家物語享受史年表(『国語国文学研究史大成 平家物語三省堂 1960)の大業には、今でも恩恵を被っています。

晩年、『太平記』の近現代資料のコレクションを整理したいので、受け入れ先を探していると聞き、非常勤で行っていた金城学院大学の中西達治さんにお取り次ぎしました(間接的な仲介だったので、福田さんは、私が間に入ったことはご存じなかったかもしれません)。ちょうどお勤め先のICU金城学院大学は、宗派の上での繋がりがあったそうで、話は順調にまとまりました。実際に目にしたわけではありませんが、膨大なコレクションだったらしい。今も金城学院大学図書館にあるはずです。

定年後の同業者たちが悩むのは蔵書整理です。それぞれの分野の体系でパッケージにはなっているものの、現在の図書館ではむしろ邪魔者扱いされることが多く、寄贈しても喜ばれません。殊にバーコードのないものは(当人からすれば苦労して入手したものであっても)、嫌がられます。同年代が集まると、自分は蔵書処分をこうした、ああした、という話で持ちきりになります。福田さんはやっぱり偉かったんだなあ(コレクションの質もよかったし、整理する人材も育てた)と、改めて思いました。