滅茶苦茶

最近、程度の甚だしいことを表現するのに、「めちゃめちゃ」という語が頻用されています。以前から、「めっちゃ」という強調法は若い人たちが使っていましたが(関西系の人に多いようでした)、最近は「めちゃめちゃ美味しい」とか、「めちゃくちゃ嬉しい」と言った使い方がされています。中には、何を見ても「うわー、めちゃめちゃ○○」という感想を連発するタレントもいて、ほかに言葉はないのかよ、と突っ込みたくなります。

金髪で赤いネクタイの好きな某国の大統領は、当選早々、やたらにveryveryを連発し、幼児の英語だなと思ったものでした。辞書を引くと、「めちゃくちゃ」「めちゃ」は、近世以降の用例しかありませんが、いい意味には使われないようです。「むっちゃ」や「むちゃくちゃ」には、程度が普通ではないこと、という意味があって、「めちゃ」に同じとあるので、「めちゃめちゃ美味しい」も誤用ではないのかもしれませんが、旧世代の私には落ち着かない語法です。

こういう話には必ず、言葉は変わっていくものだ、という反論が出ます。確かに私たちが子供の頃は、「すごく美味しい」などと言うと、祖母たちからは嫌がられました。凄いという言葉はいい意味には使わない、と言われたのです。辞書を引くとその通り、ぞっとする、不気味な感じを表す語だったようです。

私が嫌なのは、ほかに語彙がないかのように、「めちゃめちゃ○○」を連発されることです。一時、「ビミョー」という語が頻発されたことがあり、それしか返事の返ってこない若者には敬意を持てませんでした。いろんな言葉を使い分けられること、それが大人になる条件ではないですか。