国営賭博場

統合型リゾート施設、と言うと温泉など健康的な休憩所のように聞こえますが、要するに公営賭博場。その開設に熱心だった代議士が贈収賄で逮捕された、というニュースで大騒ぎになっています。そもそも観光資源の多い日本が、どうして賭博場なんかで観光立国をしなければならないのか、分かりません。あれよあれよと言ううちに決まってしまったカジノ誘致に、諸手を挙げて賛成する国民は、多くないと思います。

父と共にマカオへ行った時、初めての方に、とカジノを案内されました。ルーレットとスロットを1回ずつ試しましたが、ほんのちょっぴり儲かりました。初心者にはそうなるように仕組まれていることが、一目瞭然でした。父は大工の棟梁の跡継ぎだったので、祖父から賭事・勝負事は一切やるな、と厳しく言われていて、じっさい、その方面にはまったく才能がありませんでした。麻雀大会であわやブービー賞、という時に、もう1人下手な人がいて押し上げられ、それさえも獲れませんでした。2人とも、ふーんカジノはこういうものか、とすぐに台を離れました。ルーレットを仕切る女性が叫ぶ「こーいこーい」という声がもの悲しくて、永いこと耳の底に残りました。

賭博に夢中になる心理は、健康なものとは思えません。国会に法案が出された時、強い違和感がありました。ゲームそのものは健全娯楽だとしても、賭博に危ないカネがつきまとうことは必定です。君子危うきに近寄らず。軍備と賭博に関しては、日本は「ふつうの国」になる必要はないと思います。勤勉にこつこつ働く国民性、戦争を好まず専守防衛に徹する国、これ以上誇りにできるアイデンティティがありますか。

かの代議士は、立身をめざしながらカジノ誘致を押し通そうとした―それこそが一大博打だったことを自覚していたでしょうか。