完結祝い

後輩から、お祝いに百合の花を贈りました、とのメールが来ました。ふと、敬老の日?と衝撃が走りましたが、花屋から届いた花束には、「軍記物語講座完結記念」というメッセージカードが添えられていて(ほっとし)、嬉しくなりました。ピンクの大輪です。夜になって窓を閉めたら、家中に香りが満ちるでしょう。

版元では、全巻揃ったので図書館への売り込みに注力しているそうです。企画段階で図書館協会に電話でリサーチしたら、担当者が「軍記物語」という語を知らなかった、と社長ががっくりしていましたが、その後どうなったでしょうか。

編者としては、書店で見かけた時思わず手に取ってみたくなるようにと、書名と表紙に工夫をした所存だったのですが、一部の書店の棚挿しには出すものの平積みにはならないのだそうで、計算違いでした。近年、絵画資料の研究が進み、古典文学研究書の表紙に絵巻や屏風絵をカラーで出すのが定番のようになっていますが、本シリーズは敢えて近世の絵画資料を避けました。

第1巻は表紙に般若寺(『保元物語』の藤原頼長ゆかりの地)、伊吹山の裾野の雪景色(『平治物語』の源頼朝ゆかり)、奥州合戦跡地の橋、大手町にある平将門首塚を、裏表紙には雪の鶴岡八幡宮(『承久記』実朝暗殺の地)を並べました。『太平記』の第3巻は、表に吉野の蔵王堂仁王門、裏には隠岐の海を載せました。第4巻では表に夏富士(曾我兄弟仇討の地)、高舘から見下ろす平泉(義経終焉の地)、金閣寺、赤松一族の白旗城趾秋祭を、裏表紙には現在も福岡県に伝わる幸若舞の写真を載せました。それぞれ、関連作品を開いて貰うきっかけになれば、また日本の風景の中で中世を想って貰えれば、編者は本望です。軍記物語は、野を駆け山を越え、河を渡る文学なのですから。