此花開後

去年は菊の花が不作でしたが、今秋は2年越しにしっかり伸びた茎に、たくさん花がつきました。小菊ばかり、あちこちから1枝ずつ失敬してきて挿木で増やしたので、咲いてみないとどんな花なのか分かりません。嵯峨菊は挿して1年目しか咲きませんでしたが、今年は、朱色から黄色に咲く黄菊と白から紅へ変わっていく白菊が次々に咲き出しました。なぜ小菊に執着したかというと、鳥取在任時代、雪の来る前の花として印象深かったからです。

この時期、鳥取ではそこら中にいろいろなものが干されます。柿、大根、青菜、開いた魚・・・市役所の玄関に朝獲れの烏賊が堂々と干してあって、吃驚したこともありました。まもなく始まる、日差しのない冬に備えた、つましく、しかし豊かな風景です。畑の一角には晩菊が咲き乱れ、今年最後の彩りを見せます。「不是花中偏愛菊 此花開後更無花」という和漢朗詠集の詩句はまさにこれだ、と思わずにはいられませんでした。