泣くな女だろ

学会や会議が続き、普段とは異なるエネルギー消費で、ほとほと疲れました。定年後は、徐々にオーラを消していくことを心がけています。老人として街になじむには、現役時代、とっさに発揮できるよう用意していたオーラは邪魔だからです。が、オーラを失いすぎると、何かの時に言動が不釣り合いになって、思わぬ失敗がある。手探りでその折り合い点を探す毎日でした。

学会や会議に出ると、オーラを発揮する瞬発力が必要になることが、どうしても起きます。一昨日の学会会場でも小さな事件があり、昨日の会議でも、事務方の女性が、その場で言うべきではない愚痴を警告にすり替えて発言したので、オーラ全開!彼女は、私に反撃されたら泣き出しました。これは全然駄目です。「男は泣いてもいい、馬鹿にされるだけ。女が泣くと、それまで積み上げてきた議論が全部吹っ飛んで、その場の同情が集まる。泣くな、女なら」というのが私のゼミの40年間の教訓でした。

やれやれ。帰宅してTVをつけ、「コンフィデンスマンJP」と「ヘッドハンター」をぼんやり視ました。前者は詐欺師集団のコミカルドラマ。脚本と配役と大道具が抜群。小日向文世が楽しそうに、東出昌大がはまり役を演じ、大胆細心の詐欺プロジェクトは何度もどんでん返し。後者は、暗い主演男優と目玉がこぼれ落ちそうな女優との組み合わせのドラマ。若い頃私は、男は大石内蔵助、と思っていました、肝心のことは腹中に収めて、大きな目標を実現するものだと。謎めかしたドラマはようやく、転職斡旋業を武器に世を渡るライバル2人の位置を明瞭にし、主役の黙した部分が語られました。

月曜9時10時にこんなドラマを置くなんて、と思っていたのですが、編成の妙が分かってきました。さあ今週もめそめそ言わずにがんばるぞ、という気になれる―仕事は大石内蔵助。泣くな女だろ。