真っ直ぐな目

時刻がまるで分からないような、暗く垂れ込めた1日でした。今日は沖縄慰霊の日。TV中継で見る摩文仁の式典会場では、もう蝉の鳴いている年もあったのに、今年は未だ梅雨の最中です。そして去年は、痩せこけながらも背筋を伸ばした、まさに思いはただひとつ、という姿の前知事がいました。今年は新知事が平和宣言の最後を、沖縄の言葉と英語とで締めくくり、世代交代を眼前に見た気がしました。

例年、平和の詩が朗読されますが、今年も、小学6年生の「本当の幸せ」という詩が暗誦されました。女の子の真っ直ぐな目、強く言葉を発する唇、現職の頃はこういう目に見つめられる日々を送っていたのに・・・という感慨に襲われました。老人として暮らす日常では、逸らしたり触れないようにしたり、という姿勢が普通になってしまっている。私だけではありません。来賓席に並ぶ人たちも、東京にいる人たちも、です。

早口で逃げるように読み上げられた首相の挨拶は、言葉だけ見れば尤もらしいが、実際にやっていることとは違っている。会場からも野次が飛んでいましたが、ちらりと映った辺野古埋め立ての無残さに、息を呑みました。そして中継終了後、NHKが流した、珊瑚礁の美ら海を漕ぐカヤックの短い番組は、結果的に沖縄からのメッセージを代弁したのです。

生きて、人々と共に笑い合えること、それが大事、と語り継ぎたい-真っ直ぐな目で、強い唇でそう宣言した次世代を守ることが、国を守ることです。ほかにいったい、何を守るのでしょうか。