購読紙の今週の日曜版特集は「マラリア 根絶への道」でした。WHOの推計では2022年、85の国と地域で249百万人が感染、608千人が亡くなり、死者の8割が5歳以下の子供だというのです。蚊がマラリア原虫を媒介し、地球規模の気候変動により蚊の棲息地が広がって、罹患率も死亡率も増加傾向にあり、原虫が薬剤耐性を持つようにもなって、撲滅計画は順調ではないらしい。

マラリアはさきの大戦後、日本でも復員兵が発病し、伝染することもありました。それゆえ私の世代では熱帯の病気というイメージが強く、源氏物語の時代にもあった(瘧=わらわやみ)と知った時は???でした。本土では1959年、沖縄では61年が最後の感染例だということですが、南方アフリカ、中南米、東南アシアでは未だに猛威を振るっているようです(貧困のため適切な医療を受けられないことが、さらに悲劇を大きくしている)。

日本の研究機関や企業が、それらの地域で蚊の防除を支援しているという記事もありました。誇らしい。現地では蚊帳が推奨されているとあって、ちょっと意外。吊ったり畳んだりが面倒だとか、1匹でも紛れ込むと却って大変、とか思うのは、私たちがずぼらになったのでしょうか。現在の蚊帳は、糸に防虫剤が練り込まれているのだそうです。蚊を人肌に止まりにくくする肌クリームを開発した洗剤会社の苦労話は、目から鱗でした。

枕草子にも夜半に蚊の羽音を聞く時の不快感が書かれています。京都郊外の竹藪地帯を歩くと、(小鳥のように)巨大な蚊が群がってきて恐怖を感じます。私は蚊を引き寄せる体質のようで、子供の頃からよく刺されました。体質が変わったのか、蚊の毒性が変わったのか、昔は一晩経てば治ったのに、この頃は刺された痕がずっと残るようになって、つらくなりました。