父の日

真蒼な晴天。太陰暦では明日から五月、梅雨どきの嬉しい晴れ間を「五月晴」と呼んだのが本来だったのだ、と高校古文の授業で教わりました。すると、今日のような空がそれでしょうか。パンと野菜を買いに播磨坂へ出かけました。日向は灼けつくようですが、風が未だ機能して涼しい。茂った木々の緑も未だ濃淡があって、風景が立体的です。今年は何故かヤマボウシの花つきがよく、まるで白布を樹全体に巻きつけたかのように山盛りに咲いています。

スーパーでは父の日セールの幟が出ていましたが、誰も気にしていない風でした。惣菜コーナーにちらし寿司大盛りのパックが出ていたので、休肝日にするために買おうかなと思いましたが、具が少なくて白い飯が見える。以前は飯が見えないくらい具が載っていたのに、と情けなくなって買うのをやめました。父の日セールは、これしかないようでした(酒類のコーナーでは何か催事があったかも知れません)。

我が家では年3回、父の日と誕生日(祖父が元旦に出生届を出したのだそうで、お年玉と兼用)とクリスマスに、ネクタイを贈る習慣になっていました(それゆえ今でも自分の仕事以外で男性に逢うと、まずネクタイを見る癖がついています)。父の日には扇子を贈ることもありました。夏向きのネクタイを選んでも、殆ど締めて貰えないからです。しかし彼は彼なりに気を使っていたようで、一緒に出かける時は必ず贈ったネクタイを締めました。ある年思い切って青の濃淡に赤い差し色のある品を贈ったら、部下から、いやに若やかなネクタイをしてますねと冷やかされ、いや、今日はアフリカの使節団と会ったもんだから、と言い訳をしていました。

引退後はネクタイでなく開襟シャツなどを贈りましたが、袖も通さず亡くなりました。