空中庭園

国立劇場の会員誌「あぜくら」に、68歳の2代目庭師のインタビューが載っていました。開館当初から専属庭師は1人だそうです。国立劇場の建物は正倉院の校倉造りをモチーフとした外壁で、黒松と笹だけの植え込みが塀のない石畳に点在する、当時としては斬新な設計でした。もともとしまいこむための倉のイメージと、感情を解放する劇場の雰囲気とは合わない、と最初は思ったのですが、慣れてくると、皇居の濠に面した風景に収まりがいいのだと思うようになりました。

初めはモノクロの庭だったのに、いつの間にか季節には花見が催されるほど、梅や桜が植え込まれました。庭師の話では、桜は庭の設計を崩すと考えて、持ち込まれる植樹話を固く断り続けていたそうですが、今では通年楽しめるように、松に合う花木を植えているそうです。師の教え「庭は自然に見えるのが美しい」という言を大事にしているとのことで、いかにも職人らしいと思いました。

三宅坂国立劇場は、来年秋から建て替えのため暫く閉めるそうです。10代の頃から、新しい建物が建つと観に行ったものでした。東京は戦後復興の第2期に入っていたのです。東京文化会館の庭はイサムノグチの設計でした。千駄ヶ谷国立能楽堂は、中庭に四季、広い前庭はモノクロでした。カザルスホールへもギターを聴きに行きましたし、赤坂サカスも知人に案内して貰いました。

先週、外国人が評価する東京近郊の建造物というTV番組がありましたが(途中で寝落ちしたので全部は視ていない)、多くが建て替え、再開発を経ていることに衝撃を受けました。殊に渋谷はコロナで3年行かないうちに、別世界になったようです。空中庭園がこれからのトレンドでしょうか。