コッペリア

日本のバレエ界草分けともいうべき松山樹子追悼記事を読んで、バレエが我が国にもたらされてからおよそ110年、とあったので、えっ、と思いました。私が小学生の頃(70年前です)、いい家のお嬢さんは、ピアノかバレエを習っている(そういう子は、何故かリボンをつけていることが多かった)ことが、ステイタスシンボルのようだったからです。しかし決して高嶺の花というわけではなく、中学1年の音楽教室では、バレエ「コッペリア」を観に連れて行かれました。

たしか牧阿佐美が主演だったと思うのですが、ピンクのチュチュ姿を3階席あたりから見下ろした記憶があります。最初に、バレエはパントマイムなのだ、と言われ、主な仕草の意味を実演入りで説明してくれました。それが新鮮で、後に能楽に触れるようになった時も抵抗なく理解することができました。

数えてみれば、バレエが日本で演じられるようになってから45年目くらいの時期だったわけです。追悼記事によれば、「白鳥の湖」がパリのオペラ座よりも早く日本で全幕初演されたのが1946年、敗戦の翌年だったそうで、外来の芸能としては普及速度の速さに驚かされます。ごく平凡な公立中学でしたが、けっこう偏見なく、先端文化を体験させてくれたのかもしれません。

その後、クラシックコンサートは度々出かけましたが、オペラやバレエにはなかなか足が向かず、せいぜいTVで鑑賞するくらいで、あの時習った基本的知識はずっと役に立っています。時代は移って、ミュージカルが普及し、ダンスが体育の一環になり、バレエ界でも男性ダンサーが国際水準で活躍するようになりました。現在の校外学習にはどの程度、時代を先取りした企画が含まれているのでしょうか。