川越の友人から、ちょっと珍しい品種の薔薇を、とのメールが来ました。
【「田毎の月」は日本人が作出したバラです。花びらの枚数は少なく、一重に近いですが、それぞれの枝先に純粋に黄色の花が開くと、本当に小さな田に一つずつ月が映じているような美しさです。しかし、有名なバラ園で見かけることはあまりありません。黒星病に罹りやすいからかもしれません。】
洒落た命名だな、しかし名物菓子の名前にありそうだなと思って調べたら、新潟名産の四角い揚げあられにこの名がついていました。黄身餡の桃山か、白餡の小粒な饅頭を想像していたので、ちょっと意外でした。
私が今まで見た薔薇で一番印象に残っているのは、もう遠い昔、姨捨駅に咲いていたピンクの1輪です。駅は棚田を一望できる高い所にあり、列車を待つ間、青空にすっくと首を伸ばしていたあの花は、今も瞼裏にあります。文献調査の帰り、独り旅でした。
【これはフランスのデルバールという育種会社の作出で、ペインター・シリーズという一連の品種の一つです。デルバールは無農薬でも育つ丈夫なバラの開発に力を入れていて、フランスのバラらしく香りも強いものが多くて、私は気に入っています。】
これはまた鮮やかな薔薇ですね。ユトリロの作品はもっと落ち着いた、郷愁をそそる色合いの風景画だと思っていましたが、彼自身の一生は、いささか騒々しい、ドラマティックなものでした。画作よりも、彼のパレットを連想した方がいいのかもしれません。梅雨時の木下闇に咲く花としては、存在感を示すに十分でしょう。