通夜

母方の叔父の通夜に出かけました。皮膚科の医者で、享年は101歳と1ヶ月と1日。幼年時に中耳炎をこじらせて以来、片耳が難聴だったため声が大きく、完全マイペースの人ー自分の思い込みに人を巻き込んで世を渡って行くようなところがありましたが、一方で女性ファンの多い人でもありました。ロマンチスト自認でしたが、浪漫を本業としている私にしてみれば、時々手を焼くこともあったわけです。俳句や短歌を趣味とし、80代半ばまで毎年、夜行バスで正倉院展に出かけていました。

式場は真言宗のお寺でしたが導師は日蓮宗。結婚式はたしかキリスト教だった、と従姉が言ってましたっけ。後で訊くと、導師も寺の宗派も偶然で、自宅の近くだというだけの選択だったらしい。この土地でもう60年以上開業し、子供たちも医者一家なので、100人以上の参列者がありました。お洒落させましたとのことで、棺内の叔父はタキシードに臙脂の蝶タイ、アルマーニのソフト帽。少し痩せて目と口を閉じている(いつも喋りまくりだった)せいか、役者のように見えました。

読経が済んで、導師は親族席に向かって簡単な説法をしました。話題があちこち飛んで、最終的な結論が何なのか、いまひとつ分かりませんでしたが、縁を大事に、ということは解りました。直会(精進落とし)になり、従弟妹や初めて会う遠縁と話をしました。この次会う機会があるかどうかも分かりません。つまりこれが「縁」でしょうか。

大正、昭和、平成、令和を生きた101歳。虚弱児で、祖母は特効薬と聞けば何でも試し、蛞蝓や、蛇の生血を飲ませたりもしたそうです。しかし総じて、苦労も多かったが楽しみも多い一生だったと思います。高齢の地元女性ファンを初め、親族席の前で話し込む人が焼香の間も絶えず、私は後部座席で、焼香者に返礼をし続けました-合掌。