太平記の伝来

太平記を書写し、その本を保存し、伝えて来た人たちーその多くはかなりの知識人層だったと思われますが、記録や資料に現れてこない名前も多い。多様な分野の資料を博捜する指向を見せる近年の国文学研究でも、分野を超えた情報交換が自由自在とは言えません。

太平記の伝本研究では右に出る者がいない、と言ってもいい長坂成行さんが、太平記の書写・流伝に関係した人物のメモを花鳥社のサイトで公開しました。

https://kachosha.com/gunki2019072501/

長坂さんは、その記憶力と集中力に関しては殆ど伝説(レジェンド)の人です。若い頃、俳優名鑑・女優名鑑を殆ど丸暗記していて、後期軍記が専門だった故和田英道さんを唸らせたことがありました。ああいう人が太平記研究には向いてる、と、和田さんは感嘆しきりでした。天正太平記の注釈(小学館刊新編日本古典文学全集所収)を始め主要な諸本の公刊に尽力し、いまは悠々自適の生活らしい。

なかなかの皮肉屋で、おつきあいするにはいささか覚悟が要りますが、その粘着力、厳格主義、今や太平記研究の生き字引とでも言いましょうか。ウェブを御覧になって情報提供などの御用のある方は、花鳥社から長坂さんにお取り次ぎするそうです。お問い合わせ・御連絡は、メールで info@kachosha.comまで。