下関

下関の宮田尚さんから葉書が来ました。宮田さんとは、鳥取に勤めていた頃、国文学研究資料館中国地方担当文献調査員として御一緒して以来のおつきあいです。この仕事は夏の暑い盛りに、不毛で厖大な書誌調査(人によって、調査対象によって、また資料館側の支援体制によっては研究上の収穫があった場合もあるらしい)を割り当てられ、負担の重いものでしたが、専門分野や時代を異にする方々とおつきあいが出来たのは有難いことでした。

宮田さんの葉書には、赤間神宮の水野名誉宮司の肝煎りで宮田さんが始めた長門本平家物語講読会が、今年で全巻を読破し、田口寛さんにバトンタッチして2巡目に入ったこと、同じく名誉宮司の主宰してきた源平シンポジウムが、33回目で幕を下ろしたこと等が書かれていました。

赤間神宮安徳天皇の御陵を祀り、壇ノ浦で没した平家一門の慰霊のために建てられたお宮です。名誉宮司は史学科出身で、若い頃は宮内庁に勤め、今上陛下の立太子礼の装束のお世話をしたという、学問好きの方です。毎年、源平シンポジウムと銘打って平家物語に関する講演会を開いたり、雅楽の公演を開催したり、座の温まる暇も無いほど忙しく駆け回っていました。

未だ修士課程の院生だった私が長門本の調査をお願いした時も、その後いろいろな人と共に伺った時も、地元やお宮の方々からは丁寧に応対して頂き、学問への敬意をいっぱいに注いで頂きました。マイペースの宮田さんも、下関で、存分に平家物語を楽しんで来たことでしょう。関門海峡に湧く雄大な入道雲が、今も眼に浮かびます。