武漢

武漢から始まった新しい感染症の拡散防止が大ごとになっています。人口1100万人の都市を封鎖するなんて、想像もつきません。20年位前、幼時に罹った脊椎カリエスの後遺症のために、股関節専門の整体治療士の世話になった時、これからの世界は感染症が問題になる、と言っていたことを思い出します。医療関係者の間では、そういう見通しだったのでしょう。

武漢は1940年前後に、父が会計将校として出征していた土地です。我が家には、彼が描いた風景画がたくさん残っていて、東湖や法通禅寺らしき画もあり、遠くに聳える不思議な塔があるのは黄鶴楼の名残りでしょうか。仏蘭西租界や民家も描いていますが、長江を下りながら沿岸風景を連続的に色鉛筆でスケッチした、絵巻のような小さな画帖も残っています。

ニュース映像に眼を凝らすと、新しい街に古い建築物も混じっていて、背後に広大な大陸があることが感じられます。夏の暑さは有名です。水陸両様の交通の要衝として栄えてきた所で、現在も流通業が盛んな商業都市なので、移動禁止という措置は、我々の想像以上に打撃ではないでしょうか。

亡父の描いた武漢の風景画の何枚かは、『明日へ翔ぶ』(風間書房)の口絵に載せて貰いました。この春に出る第5集にも、絵本の世界のような1枚が入っています。もっと思い出話を聞いておけばよかったと思いますが、子供は親の過去のことなど興味がないものですよね。辛うじて聞いたいくつかの体験談は、このブログにも書いておきました。

武漢のことを調べていたら、熱い茉莉花茶が飲みたくなりました。1日もはやく感染症対策が功を奏しますように。