雨月物語

島弘明さん校注の『雨月物語』(岩波文庫)が出ました。かつて鳥取大学を離任した際、後任が来るまでの集中講義を近世は長島さん、中世は佐藤恒雄さんにお願いしました(なんと豪華な顔ぶれでしょう!)。学生たちの評判は、とてもわかりやすい講義だった、とのことでした。

本書の解説もわかりやすく、要を得たものです。その示唆を受けて、「浅茅が宿」の、主人公が徐々に夢から覚め、廃屋で一夜を明かしたことを認識していく部分を読み直しました。何度か読んだことのある作品ですが、改めてじっくり読んでみたくなります。

凡例に底本(梅村判兵衛・野村長兵衛刊初版本)のルビ、句読点を訂したとありますが、ときどきおや?と思う箇所があります。版本の清濁があまりあてにならないことは承知していますが、「すさまじ」の「さ」は近世では濁音でしょうか。また、p27l4の「こそ」は、下の「今夜の法施に随縁したてまつる」にかかって強調するものだと思います。

滝沢馬琴とその周辺では、長門本平家物語を読んでいました。秋成も当然、源平盛衰記を読んでいたはず。長島さんの作った本文に導かれて、何十年ぶりかで秋成を楽しみたいと思います。