労働環境

昨日の朝日朝刊教育欄に、刀禰真之介さんという人が、教員の労働環境改善の第一にメンタルヘルス対策が必要だと語っていました(「先生のための「心の保健室」を」)。2022年度には、精神疾患で休職した公立学校教員が6千人を超えたというから驚きです。他の業界よりも比率が高く、しかも増加傾向を示しているという。教員志望者の減少(定員割れ)が各地で問題になっていることは、周知の事実です。

この記事に共感を持ったのは、教員の仕事量に際限が無いことのほかに、利害関係者が多く、児童生徒・管理職・同僚・保護者・地域住民らの要求が複雑に絡み合っていることを、指摘していたからです。いくら教育技術や教科内容を習ってきても、新卒でいきなりこれらの集団の中に投げ込まれ、トラブルを起こさず、業務日程を滞留させずに自らの理想の授業を続けられたら、殆ど神業でしょう。

以前は先輩の同僚たちがそれとなく様子を見ていて、相談にも乗ってくれたのですが、今はめいめいが手一杯でそれどころではない。刀禰さんが指摘するように、全て管理職が観察し指導するのでは、きめ細かな配慮も出来ないし、指導を受ける方もプレッシャーが強く、却って負担になったりします。それに教え子たちの本音を訊くと、子供がこわい、と言う。兄弟姉妹が少ないので、年の離れた者たちとの距離の取り方が分からないらしい。

基本給の4%を一律に上乗せする制度は、私が高校教諭になる直前に始まりました。私自身は、授業の予習以外は家に持ち帰らない主義(学年末の採点などはそうもいきませんでしたが)を通そうとしたので、結局それ以上の時間、残業していたと思います。あの頃は全く残業しない人もいました。しかし時間数ではなく、落ち着いて考えたり話し合ったりする余裕が誰にもないことが、問題です。国の根本は教育の質、本格的な検討と対策を。