土をめぐる冒険

先日、長野の友人が上京した折に、北越新幹線の車内で見たから、と言って、JR東日本の広報誌「トランヴェール」12月号を持ってきてくれました。「とちぎ、土をめぐる冒険」という特集です。表紙には真っ赤なとちおとめ。

新幹線に乗ると座席ポケットに「ご自由にお持ち帰りください」と挿してある小冊子。その沿線の県を取り上げて、話題を立てるグラビア誌です。月刊ですから話題を探すのも結構大変ではないかと思いますが、その分、ありふれた観光案内を越えて、ちょっと深掘り、ちょっと装った記事になっています。広報誌と言っても侮れない。

今号は園芸で有名な鹿沼土と陶器で知られる益子を中心に、宇都宮の駅弁(私が通勤した四半世紀前は、夜7時には売店がすべて閉まり、駅弁はおろか口に入れる物が何もなしに乗車しなければならない駅でした)や、塩原温泉、餃子店の広告頁もあります。しかし土壌学者(地質学者とは違うらしい)と火山学者との案内で語られる「黒ぼく土」の知識は、目から鱗でした。「黒ぼく土」なんて語があるのも知らなかったのですが、日本の国土の約3割、畑の5割を占めているのに世界の陸地面積の0・8%にしか分布していない、という。100年で1cmくらいしか積もらない、それは自然の火山灰や軽石に、腐食した植物や、人間が火を使ってできた炭などの有機物が混じって土になったからだそうです。グラビアには、男体山の噴火によってできた鮮やかな黒・黄・赤の地層や、黒ぼく土・赤玉土(関東ローム)・鹿沼土赤城山噴火時の軽石)の地層の写真が載っていて、目を見はりました。地層がこんなに美しいなんて、知りませんでした。

益子を愛した亡父は、あそこは土がよくない(粗い)から釉薬を大胆に流した焼物ができたんだ、と言っていました。浜田記念館には今も父の居間があるような気がします。