発達障害の子育て

友人から、岡嶋裕史さんの『大学教授、発達障害の子を育てる』(光文社新書 2021)を借りて読みました。岡嶋さんは情報学研究者で、母校の大学の国際情報学部教授。本書のキャッチコピーには、「自閉スペクトラム症の息子と、自分もその傾向があった父親の日常生活奮闘記」とあります。

ここ四半世紀ばかりの間に、「発達障害」という語がやたらに出回るようになりました。あれもこれも発達障害という診断を下して、特別扱いを要求するだけで問題解決法が示されない、と憤慨していたのですが(実際、教育現場では、診断だけで対策が分からないため困惑するのみの時期があった)、また発達障害の子は親も一風変わっていて、辛うじて社会の中でやっていける範囲だが子はその域を超えてしまっている場合が多い、とひそかに思っていたのですが、本書で一気に、そのもやもやが晴れました。

軽妙な筆致で、自分自身の過去の体験、我が子の現状を語りながら、発達障害(の中でも自閉スペクトラム症)とはどういうものか、どう考えて対処していくのがいいかを説きます。その方針には賛同することが多い。と言うより、当事者自身からの提言は、建前論のヒューマニズムを超えて、周囲にも(「定型発達者」という用語があるのだそう)可能で有益な、共生のあり方を指し示すのです。

非当事者はまず、p18以下、p280以下のDSM分類(発達障害とは何か)から、当事者は巻末のQ&Aから読み始めることをお勧めします。そして「あとがきに代えて」とある、「どうか今を楽しんでください」というメッセージを読めば、気が軽く、あかるくなります。それにしても、コンピューター用語で人間の発達を説明した方がすらりと理解できる御時世になったとは・・・絶句。