小栗判官の癒やし

人間文化研究機構主催のオンライン・シンポジウム「フロントの知を楽しもう―女院小栗判官のおはなし」を視聴しました。河合佐知子さんが「女院って何?」、粂汐里さんが「湯の峰温泉小栗判官」と題して話題提供、進行役の光平有希さんを交え、合計1時間であれこれお喋りするという企画です。この3人は機構内では人文知コミュニケーターという職務なのだそうで、社会と研究の場を、研究者の立場から繋ぐ役目だそうです。光平さんは明翔会の1員、音楽療法の歴史が専門です。

率直に言って、企画の意図、視聴対象がよく判りませんでした。日本史、芸能史、ジェンダー論、それらを無理に、短い時間のシンポジウムに仕立てようとしたらしいのですが、女院小栗判官を熊野詣で結びつけ(結びついていない)、最後は伝説を題材にした名産品(菓子)の話題で終わりました(いっそ熊野の物語史的観光案内と言った方が脈絡が分かる)。ジェンダー論なら、小栗判官の物語は、照手姫が変わり果てた夫と気づかずに土車を牽く献身が肝なので、女院の一族弔い義務と共に論じてもよかったのでは。

かつて青墓の郷土史家が中心になって、小栗サミットという研究会を年1回開催した時期があったのを思い出しました。日本史や古典文芸の話題を、最新の知識を織り込みつつ気軽なチャットで、という企画は大いに推奨したいと思います。例えば、女院の熊野詣の実例を挙げ、熊野信仰の底流にある蘇り、癒やしの聖地という思想の時代別展開を紹介、癒やす能力の源泉が古来どうイメージされてきたかを、3人でお喋りしてみたら面白かったかも。それには90分で、1人20分ずつ話した後鼎談、視聴者のコメントはチャット表示で流す、といった方式がよかったのではないかしら。

参加者は30名強、出された画像はどれも綺麗で、楽しく視ました。