国家財政

「文藝春秋」11月号掲載「財務次官、モノ申す」(矢野康治)を読みました。一読、衝撃を受けたのは、矢野氏が文中2度も自らを「モノ言う犬」と喩えていることです。

最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、言うべきことを言わねばならないと思った、と前置きし、すでに国の長期債務は973兆円、地方の債務を併せると1166兆円、GDPの2.2倍。それなのに大規模な経済対策、財政収支黒字化の凍結、消費税の引き下げ等々が提案されている。これではタイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものだと言っています。国民は本当にバラマキを求めているのか、実際に困っている人には適切な手当が必要だが、日本人みんながカネ寄越せ、バラマキ大歓迎といっているわけではないだろうとも言っていて、私もそう信じたい。

弊国の財政赤字GDPを分母にした一般政府債務残高)は今や256.2%、独逸は68.2%で、米国でも127.1%だそうです。GDPを増やしても、消費税を下げても問題の解決にはならないことが説明されています。私には経済の詳細は分かりませんが、税収より支出が上回る国家財政が何十年も続くのは異常だということくらいは解ります。

ウェブで、赤字国債に頼り始めた時、一旦黒字化した財政が再び赤字化した時の首相とその前任者を調べると、ああ、そうだったのか、と納得することが多い。1国の財務次官が「犬」と自称しながら諫言しなければならない政治とは、いったい何でしょうか。あれはじつは財務大臣が書かせた原稿だ、といううがった見方もあるようで、もしそうなら、財務大臣自らが財政健全化を言い出さない政府って、何?

現在の日本で個人の預貯金が多く、消費が控えられているのは、将来が不安だからです。選挙民も勉強しなくては。まずは本論文必読です。