路傍の花

繁華街やターミナル周辺は人が減っても、街中は夫婦連れやジョギング、犬の散歩がうろうろ。なるべく人を避けて裏通りを歩くと、見慣れない車が強引に入ってきて、見ていると料理の宅配だったりする。コロナの街です。

このところ、裏通りの庭付きの家がどんどん切り売りされて、四角な新築の家が軒を接して建ちました。建ってすぐは見知らぬ植木が数本植え込まれて、通りがかりの季節ごとの楽しみがなくなったのですが、それらの玄関先も、数年経ってみると、限られた空間に何かしら季節の彩りが点じられ、新たにこの時期はあそこ、翌月はここ、というポイントが出来てきました。1株だけ石楠花の目立つ家、苺をオーバープラント代わりにした家、八重桜をバルコニーで囲んだ家、藤を物干し台に絡ませた家など各戸の工夫が楽しめます。

本郷通りは東大の楠若葉が終わって、これから椎の花の季節。今年は、藤棚や楠の木陰の読書は出来ませんでしたが、学生時代には眺める余裕のなかった楠若葉の美しさは堪能できました。用足しのために歩きながら、路傍の雑草と見えるものも、かつては園芸品種だった草花が逃げ出した(拡散した)例が多く、時代の推移に気づきます。繁殖力が強くて手を焼くハルジョオンも、元来庭園用に輸入されたと知って、吃驚しました。蔓日々草、花華鬘、雛罌粟、松葉蘭、菫、花酢漿草、庭石菖、夕化粧・・・そういう眼で見ると、いま垣根の裾から道路の縁へ進出中の花も、何種類かあります。

雑草の花を摘んで活けるのをお勧めする新聞記事を見ました。野生の花は、摘むと見る見る手の中で萎れていきます。摘むなら帰宅直前に。蒲公英などの菊科や花カタバミなどは、直射日光の下でしか開きません。摘んだ生命を無駄にしないように、よく観察してからにしてください。