平家語りの継承と保存

昨日、残暑の中を紀尾井町まで出かけ、「平成30年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」と銘打った、平家語りの公演を聴きました。当道音楽保存会代表の薦田治子さんが、地唄箏曲演奏の若手3人と共に作った、平家語り研究会の2回目の成果発表です。150人くらい入るホールは、満員でした。聴衆には老婦人が多く、若い人もちらほら見えます。芸能の研究者にも何人か遇いました。

1年半ほどの間に、3人の演奏は格段に巧くなっていました。以前はユリが滑らかでなかったり、箏曲風の発声が混じったりして、平家語りと呼ぶには躊躇がありましたが、今回は、平家語りを習得した、と称するに足ると思いました。3人それぞれに個性があり、暗譜で語って(本来、琵琶法師は暗誦)度忘れしそうになったハプニングや、声は大きくてはっきりしているが、ずっと聞き続けるとつらい(メリハリがないので)人もありましたが、今度は各人、今回とは異なる句を語るところを聴きたいな、と思えました。

但し、目が見えない故にこの芸を自分のアイデンティティとして、生涯を賭けて上達していく、のではなく、習って稽古して巧くなり、レパートリーの1つとして演奏する芸になるのはやむを得ないのでしょう。津軽系平家語りと共に、こうして当道系の語りを語る人が複数出たことは、ひとまず平家語りを保存できたと考えていいのかもしれません。

自由席で偶然、2人連れの知人の隣席に座ったので、帰りに四谷の駅前で麦酒を呑みました。キリスト教系の大学経営や、JASRAC著作権保護、青春18切符のことなど、知らなかった分野の話題があれこれ出て、2時間以上もお喋りしました。