菊日和

先週までは、空気の中に木犀の香りがするのは気のせいかな、という程度でしたが、もうたっぷりと、濃密な香りを楽しむことができるようになりました。至福の季節です。東京の街は春は桜、秋は木犀が、思いがけない所から歓迎のメッセージをよこしてくれる。金木犀の時季が過ぎると、銀木犀、柊木犀が白い花を咲かせます。金木犀を砂糖漬にして、料理や菓子の飾りにしたいと思うのですが、落ちた花を掃き集めるわけにもいきません。

先週は学会会場の校庭でも、大きな屋敷の門前でも彼岸花が盛りでした。今や彼岸花も園芸用の花になり、縁起がわるいというイメージはなくなったのだな、と感心しました。以前は土手を歩くと、彼岸花の首が鎌で切り落とされたように点々と落ちていることがよくありました。却って不気味だし、せっかく咲いた花が可哀想でもあるので、拾ってきて灰皿や大皿に浮かべると、モダンな感じの卓上花になりました。

我が家ではランタナが、今頃元気に咲き始めています。夏の花なのに今年は暑すぎたのでしょう。郭公薊はどんどん分蘖して、1茎に1輪ずつ薄紫の花をつけ、イギリス式庭園ならハーブに混ぜて観賞するのにいいのですが、やむなく吊り鉢にしました。鶏頭は、夕方遅く急いで買ったら勢いのない苗をつかまされ、花屋を恨んでもしょうがないので、思いきって切り戻ししたところ、濃い牡丹色の花房が頭をもたげてきました。こうなると嬉しく、いとおしくなります。ぼつぼつ小菊の蕾が見え始め、咲くな、とほっとして、溜まった洗濯物を一気に干しました。