水天門

赤間神宮の名誉宮司水野直房さんからお手紙が来ました。7月20日に国の文化審議会から、赤間神宮の水天門と回廊を国の登録有形文化財に指定する答申が、文科省に出されたとのことです。

壇ノ浦を望む丘の上に建つ水天門は、青空と安徳天皇陵を覆う森とを背景に、色鮮やかに印象に残ります。「波の底にも都の候ぞ」と慰められて入水した幼い天皇のために、竜宮城をイメージして造られた珍しい様式で、関門海峡の景観の一要素となっている点も評価されたことが、地元にとっては嬉しいようです。

下関は大規模な空襲に遭い、先々代の宮司水野久直さんが、1947年に大連から帰国して赴任した時には、簡素な神殿があるのみだったそうですが、地元の協力を得て58年に水天門を完成させたとのことで、当時、これだけの規模の計画を実現するのは並大抵の苦労ではなかったでしょう。吉報を報じる新聞記事には、当時のことを説明する名誉宮司の写真も載っていて、父君の戦中戦後の苦労が報われた喜びが見えるようでした。

創建130周年記念の年に『海王宮―壇之浦と平家物語』(三弥井書店 2005)の編集をお引き受けし、書名は「懐古詩歌帖」の詩の一節から採ったのですが、装幀は、水天門を思わせる青と朱で統一したい(川上澄生の版画にもそういう色合いのものがある)、と版元に言ってみましたが、奇抜すぎる、と受け入れられませんでした。

もう、なかなか下関までは出かけられなくなりましたが、名誉宮司のお手紙の宛名書きは相変わらず達筆で、お元気なんだなあと安心しました。水天門の写真は赤間神宮のHPで見ることができます。