平家琵琶を、現代人の日常に楽しめるエンタメとしても残していくことができるか、という課題をこのところ考えてきました。3月の大野美子さんの公演(句組は「禿童」「我身栄華」)を聴いたモモコさんから、メールが来ました。モモコさんはかつて跡見女子大で非常勤として教えたゼミ生。ジャズに詳しく、批評家裸足のブログを書いているので、ぜひ感想を聞かせてくれと頼んであったのです。
【初めての平曲、しかも大きなホールではなく、ライブハウス並みの広さで目の前での演奏。古典的な邦楽文化を知る貴重な体験でした。
平家琵琶の掻撥や返撥が、バロックギターのアルペジオに似た音色だと感じました(ギターと琵琶は祖先が同じ)。
一方、ジャズの歴史は浅く、20世紀になってからで、そのルーツはアフリカ系アメリカ人の労働歌です。色々な時代や民族の音楽を取り入れながら進化を遂げてきました。クラシックもジャズを構成する需要な要素の1つです。「クラシックをジャズ風に弾く」というのはよくありますが、私は逆に「ジャズをクラシック風に弾く」とどの様になるのかを考えた時期があり、その次に考えたのが和楽器でジャズを演奏したらどうなるのか、でした。LEO(今野玲央)という若き新進気鋭の琴演奏家はチック・コリアの「スペイン」を演奏しています。LEOの「スペイン」はまさしくジャズになっています。
平曲の音律は、西洋音楽の階名だとフリジアンモード(ミの旋法)に当たると言われています。フリジアンモードはフラメンコでよく使われ、チック・コリアの「スペイン」はその代表的な曲です。フラメンコ特有の哀愁と熱情を生み出すこの音階が平家物語の無常、無念・悲哀の感情にピッタリですし、また、フラメンコギターの表面板を叩きながら弾くというパーカッシブなゴルペ奏法と、琵琶の撥面を撥がバチンを鳴らすのは同じと言えます。琵琶で「スペイン」を聴いてみたい、と思いました。
ですが、平曲は語りに特化した琵琶。あの独特の語りと一体になってこその、しかも独演での芸術です。琵琶でインストゥルメンタルのジャズを弾くのは、薩摩琵琶や筑前琵琶に任せるべきかもしれないと思うに至りました。】
最後に、LEOの「スペイン」のYouTubeが貼ってあり、視聴して思わず唸りました。