練り物

秋田県と四国4県の物産展が有楽町で開催された、との報道をTVで視ました。10月に秋田県知事(地元の殿様の家柄です)が四国の食品を侮蔑するような発言をして問題になり、謝罪し、四国側から提案された企画なのだそう。四国のじゃこ天は貧乏くさい、と秋田県知事が言ったのだそうで、県庁には抗議が殺到、愛媛では蒲鉾店へ秋田からの注文が激増、中にはお詫び旁々来店する秋田出身者もいたとのこと。物産展で用意されたきりたんぽとじゃこ天のセット50個は、15分で完売した由、怪我の功名でしょうか。

練り物は地方色の出る食品です。我が家は玄界灘に臨む博多の出身なので、練り物を些か莫迦にしている風がありました。小田原蒲鉾なんか混ぜ物、といった案配(昭和20年代の話。現代ではそのブランド性、高価に驚嘆)です。しかし山陰地方で暮らして、私は考えが変わりました。

鳥取へ赴任する汽車で乗り合わせた学生から、豆腐竹輪はうまい、と聞かされ、現地ではちょっとした集会にはみんなこれを持ち寄ってくるのだと知りました。豆腐を混ぜた竹輪で、色が白く柔らかく、安い。蒲鉾は何と言っても山口です。弾力があり、色も白くなく、いかにも魚肉100%の歯触りで美味しい。竹輪は島根の野焼き、あご(飛魚)、石巻の鯛竹輪が私の推しです。愛媛のじゃこ天は、見た目はよくないが、骨ごと摺ったじゃこの野性味がウリ。

法被を着て愛媛県知事と並んだ秋田県知事は、あれ以来、行く先々で、知事、これどうだとじゃこ天が出て来る、と頭を掻いていました。秋田県民、大したもんじゃないか、と感心しました。愛媛県知事は叩き上げの政治家、したたかです。でもふと思いました。うちの知事が失礼して、と県民が詫びて歩くのは、やっぱり地元の殿様だから?愛されてる。