漢方薬

上代文学が専門の多田一臣さんのブログを久しぶりで覗いたら、集中治療室に入るほどの目に遭った経験を書いていました。口述筆記だそうです。kazuomitada.com

彼は続報に「漢方薬の怖さ」を書いているのですが、私も思い出したことがあるので書いてみます。鳥取在勤時代、初めて東京を離れ、家族や旧友と会うこともなく、アパートと職場を往復する日々で、キッチンドランカーに近い生活になったことがありました。蕁麻疹が出て、原因が分からず、職場のストレス(上役からのストレスも結構あった)だろうと、市内の皮膚科にかかりました。中年の医師でしたが、問診後、紛薬らしき物を並べて1匙ずつ舐めさせ、どんな味かを訊くのです。今まで漢方医にかかったことがなかったし、そもそもこの開業医が漢方だとは知らなかったので、怪訝に思いました。その内医師は、邪馬台国に関する魏志倭人伝の記事について講釈を始めました。こちらは全く???です。ようやく講釈が終わり、漢方薬を処方されて帰ってきました。後から考えると、味覚によって体調を診断したのでしょう。

同僚の日本史の教官にこぼしたら、「講釈自体がストレスになる。記紀は私の方が専門だと言いなさい」と忠告されました。じつは地元では、よく知られた医師だったらしい。蕁麻疹は、その内に緩慢ながら収まって行ったようです。

多田さんは、漢方だから身体に害はないと考えてはいけない、副作用のあるものはきちんと周知すべきだと言っています。漢方薬は常用しても害はない、サプリメントのような使い方をするものという思い込みが広まってはいないか、と。一般に、薬は毒を薄めたもの、複雑な要素が組み合わさった人体には個別に適不適がある。西洋医学東洋医学かに関わらず、医師の指示を無批判に墨守するのは、危険なことでもあります。