米飯

宇都宮時代の教え子から(正確には彼の妻から)、新米3升が届きました。銘柄はコシヒカリですが、「かえる米」というブランド名になっています。同封されていたチラシによると、水田に蛙を住まわせて、雑草や害虫を退治して貰う、有機農法で育てたのだそうで、畦の草丈を調節したり、春先の作業を一部変更したり、水路のU字溝に橋を架けたり、蛙のための工夫をしたという。蝌蚪(おたまじゃくし)は雑食性で田の草も食べるが、成長後の蛙は肉食性で、害虫を食べるのだそうです。稲作に合った食生活なんですね。合鴨を飼って草取りさせる農法は有名ですが、蛙農法は初めて知りました。

かつて都心以外は、夜は晩春から盛夏まで、蛙の大合唱でした。私たちの世代は初夏には蛙、秋には虫の声が聞こえないと不安な気がしたものですが、蛙は一時は絶滅が心配されたほど減少、最近は都会から来た住民に鳴き声がうるさいと言われることもあるそうです。子供の頃、ガキ大将が竹竿で、池の中から半透明な長い紐を巻き上げて、これが蛙の卵だと教えてくれましたが、不気味で、こわごわ眺めました。

1人前の米飯を炊くのは大変なので、ここへ越してきてからはしまい込んでいた炊飯器を引っ張り出しました。ただ炊くだけの単純な機能しかない機種です。20年ぶりでしょうか。米を磨ぎ、内釜を仕掛けてからふと、これで作動しなかったらどうしよう、と不安がよぎりました。かつて禅宗の大学を出た友人は洗面器でも飯は炊ける、と自慢していましたが・・・無事につやつや光った白飯が炊き上がり、甘い飯粒を噛みしめました。

考えてみれば、我が家も最近米飯に合う小鉢が増え、漬物や佃煮も常備するようになっていました。健康に留意し体力に合わせる内に、自然にそうなったのです。送り主の教え子も今年は還暦、食生活を変えて長生きしなさいというメッセージなのかもしれません。