農福連携

ノーフクレンケイ、という耳慣れない言葉が、昼のローカルニュースから流れて来ました。ん?と思って画面を視ると、僻地の農園造りで知られた男性バンドのリーダーが、何やら地方自治体の催しで挨拶をしていました。ちょうどその日の朝刊の経済欄にも、「農福連携」(何度も打って、やっと我が家のPCもこの漢字変換を記憶した)という語が出ている。「障害者 農業で働く」という3回連載記事(朝日10/27~29)です。

人手の足りない農業現場で障害者が働ける分野を見つける福祉事業の推進を、農林水産省が2019年から始めたらしい。新聞が紹介したのは愛知県江南市の一般社団法人と、さいたま市の障害者就労施設の2例で、前者は就労継続支援B型(雇用ではなく、報酬も賃金並みではない)、後者はA型(最低賃金以上の報酬を出す)でした。どちらも単なる耕作・収穫・出荷だけでなく、生産物に付加価値をつけることや、栽培法の工夫、販路の開拓、地元の農協や大学(今どきの大学には、フードビジネス学科というのもあるんですね)との協力、アンテナショップの開店など、知恵を絞っているようです。

農水省がこんな事業をやっているとは知りませんでした。補助金も出るようです(公式サイトがあります)。しかし農家の人手不足解消だけから発想したら、それは間違いでしょう。未だ学習障害児や発達障害という用語はなく、特別支援学校が中学までだった頃、農業高校の定時制には多様な障がいを抱えた生徒が入ってきました。対応する技術も専門的知識もなくただ見守る私が得た確信は、土を触る、植物を育てる体験は、情緒を安定させ、相手を「待つ」ことを覚えさせる、ということでした。動物や人間との関わりには何らかのレスポンス、リアクションがありますが、作物の収穫は、手を尽くした後じっと待たなければいけない。それは、人間社会で生きていく上でも絶対に必要な経験です。