菓子屋の90年

母の命日が近いので、花を買いに出かけました。近辺の花屋はコロナ以来撤退したり、代替わりで商売が駄目になったりなので、大通りの花屋まで行きました。ここは少々高いがやむを得ません。赤い芽がぎっしりついた、花屋も名を知らないという枝物に、黄色や橙色の薔薇とカーネーションを添えて、秋色の束にしました。ほぼ1週間分の食費と同額になりましたが、墓参もせずに3年経ってしまっているので、せめてもの仏華です。

三原堂へ入ってみたら、新作菓子がいろいろ出してある。焼皮胡麻餅という黄粉餅と、「いちまつ」と命名された焼菓子を買ってみました。今日が開店90周年だと言って、大学最中を1個、プレゼントされました。半世紀前の学生時代、本郷には藤村と扇屋と合わせて3軒の和菓子屋があり、さすが茶道好きの加賀藩屋敷お膝元だと思っていましたが、藤村が閉店し、一時出ていた純洋菓子屋も撤退して、今は2軒だけになりました。扇屋は季節ごとの生菓子、三原堂はレトロな焼菓子であれこれ新作を試みます。

本郷は自転車のマナーが悪い所。狭い歩道をくねくね飛ばすので、肝を冷やします。ある日、親子3台の自転車が連なり、先頭の父親が犬のリードを引いてベルを鳴らしながら歩道を突っ走った時は、呆れました。我が家の前の坂道では、ブレーキをきいきい鳴らしながら走り下りる人が絶えません。区役所に掛け合ったのですが、注意事項が多すぎて路面には書ききれない、と言うので、仕方なく、見かける度にシーッ、シーッと声を掛けました。罵られたこともありましたが、3年続けたらようやく減りました。最近はウーバーイーツと、ヤンママが子供を乗せて疾走して来るのが恐い。

帰って、花束を備前の壺に活けました。亡くなった先輩が、学位取得のお祝いに贈ってくれた壺です。灯火の下で映える、温かい色の供華になりました。